解き方を暗記する数学の学習法もある

「数学は暗記科目ではない」と言われていますが、「解き方を暗記する勉強法」もあります。
※)和田秀樹先生をはじめとする先生が提唱しています。これに反対している数学学者や先生もいます。

わたしは数学は暗記とは考えていませんし、理解したほうがいいと思いますが、受験や資格試験という制度においては、この勉強法も「あり」だと思います。
とはいえ、この勉強法の大前提を知らないまま実践すれば数学の成績は伸びないどころか、ますます数学が嫌いになってしまうことでしょう。

どういうことでしょうか。

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受験や資格試験の制度上、解き方を覚えれば偏差値があがる

たとえば、受験生200名で合格枠が100名の試験において、今まで見たことがない「未知の問題」を出題したとします。

これを解けるのは、受験生のうち、ごく限られた人だけになります(解けた受験生は10名いたとします)。
つまり、未知の問題を出題すれば、合格者は10名だけになってしまい、合格枠の残りの90名は埋まらず、受験や資格試験の役割(=合格者と不合格者を振り分ける)を果たすことができなくなってしまうのです。

中には「受験生に解く過程を書かせて、部分点で合格、不合格を振り分けていけばいい」と考える人もいるかもしれません。
しかし、そうすると採点をする人の負担が激増してしまいますし、そもそも、ほとんどの人は部分点でさえとることはできません。
先ほどの例だと部分点をとれるのは20名ほどになるのではないでしょうか。
つまり、10名正解、20名部分点で、合格者は30名となり、先ほどと同様に合格枠の100名を確保できなくなってしまうのです。

今度は「未知の問題でも対処できるように訓練すべき」という意見が出てくるのかもしれません。
しかし、そのレベルにまで鍛えるには莫大な時間がかかります。
受験生が勉強しなければならないのは数学だけではありませんし、受験までの時間は限られています。数学にだけ時間を割くわけにはいかないのです。

このように受験生を「ふるい落とす」「ふり分ける」という目的の受験や資格試験というくくりの中では自ずと数学の問題のバリエーションを増やすことは難しくなり、解き方が決まってしまい、解き方を暗記する勉強法が成り立ってしまうのです。
たとえるなら、つぎのうち、解き方1までを覚えれば偏差値45、解き方1から3までを覚えれば偏差値55のようになりえるのです。

・難易度1:Aというタイプの問題 → このようにして解く(解き方1)
・難易度1:Bというタイプの問題 → このようにして解く(解き方2)
・難易度2:Cというタイプの問題 → このようにして解く(解き方3)
・難易度2:Dというタイプの問題 → このようにして解く(解き方4)

しかし、ここで気がついたのではないでしょうか。
それは、この勉強法には「大前提」があって、その大前提なくして、この勉強法を真似しても、おそらく数学の成績は伸びないどころか、数学が嫌いになってしまう恐れもあるということです。
大前提とは何でしょうか。

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「解き方を暗記する勉強法」は、ある程度、数学ができる人のための勉強法

過去問とまったく同じ問題が出題されることは、ほとんどありません。ほぼ同じ問題でも数値はちがいます。
つまり、いくら解き方がわかっていても、基礎力のひとつである「計算力」がないと正解できないのです。
「そんなの、当たり前じゃない?」と思われた人もいることでしょう。
しかし、もし、あなたが数学が苦手であったり、文系だったりすると、「解き方を覚えてしまう勉強法」は、あなたが思う計算力よりも、より高い計算力が求められています。
そのために、繰り返し、同じような問題を解いて計算力をつける必要がありますが、「理解」「数学を勉強する楽しみ」を置いておいて、この勉強法のためだけに繰り返し問題を解いていると辛くて、挫折してしまう人が多々でてきてしまうことでしょう。

また、「19740910」を覚えてほしいといわれても、覚えられないでしょうし、たとえ覚えたとしても、すぐに忘れてしまうと思います。暗記を苦痛に思う人もいることでしょう。
つまり、「解き方を覚える勉強法」を実践したところで、解法を覚えられない人もたくさんいますし、覚えようとするとき苦痛を感じるでしょうし、たとえ覚えることができたとしてもすぐに忘れてしまうことでしょう。

つまり、「解き方を暗記する勉強法」とは、計算力があって、暗記を苦としないモチベーションがあるなど、ある程度、数学が得意な人たちの勉強法なのです。

だから、数学が苦手な人、文系の人たちがこの勉強法を実践したところで、「丸暗記しようとする→挫折する」「丸暗記する→すぐに忘れてしまう」などのように失敗してしまうのです。

しかし、ふつうの人でもこの勉強法の効果を発揮させることができます。
そのキーとなるのは「理解」と「基本」です。

やはり「理解」と「基礎固め」が大切

「19740910」を覚えてほしいといわれた後、「1974年09月10日は石崎の誕生日」と意味つけされれば、覚えやすいのではないでしょうか。それに、忘れにくくなると思います。
暗記するのにも「理解」が必要です。
理解すれば覚えやすくなるだけではなく、忘れにくくなります。
※)これは脳科学、心理学の観点からみても、同様に言われています。

また、どのような学問でも積み重ねが重要ですが、数学はその傾向が強く、高校数学ができないのは中学数学が理解できていないこと、中学数学ができないのは算数が理解できていないことが原因のことが大半です。
だから、たとえば大学入試や資格試験で数学の試験の解き方を暗記できない場合は、その前段階の中学数学や算数が十分にできていないことになります。
前段階、つまり基礎をしっかりと積んでおくことが大切です。

というわけで、「解き方を暗記する勉強法」は、数学を理解しつつ、前段階、つまり基礎をしっかりと固めておけば、受験や資格試験においては心強い味方になりえます。

ちなみに、中学数学に関しては、算数からじっくりと解説している本があります。中学数学からやりなおそうと思っているのならば、この本を読めば「基礎固め」と「理解」を同時に達成できるので、参考にどうぞ。

『0(ゼロ)からやりなおす中学数学の計算問題』(総合科学出版)

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